Skebで小説の挿絵を依頼してみたレポート~03:支払い方法としてプリペイドカードを使う事について

 

レポート目次

01:はじめに&依頼の大筋
02:挿絵内容相談の詳細について
03:支払い方法としてプリペイドカードを使う事について
04:結局のところの使用感は?
オマケ:見積もり前の打ち合わせログ

 

【支払い方法について】

 Skebの支払い方法はクレジットカード決済となっています。

 依頼を出した時点で運営に依頼料が供託され、絵師さんが納品した時点で供託されていたお金が絵師さんに支払われる事が確定します。

 依頼したもののキャンセルとなった場合、供託されていたお金は帰ってきます。

 

Vプリカでの支払いも可能】

 クレジットカードがない場合はプリペイドカードの「Vプリカ」での決済が可能となっています。Vプリカはコンビニ等でお手軽に購入可能です。

 コンビニ等で買った場合は買って直ぐに使えるようになるわけではなく、購入して手に入れたコードをVプリカの特設サイトでログインして登録する必要があります。その後はクレジットカードと同じ要領で使用可能です。

 

Vプリカ支払いでキャンセル返金は行われる?】

 Vプリカで支払いを行ってもキャンセル発生時に返金は行われるようです。

 2018年12月3日に実際にVプリカを3000円分だけ購入し、それを登録してSkebにて3000円の依頼を出した時点で運営に供託が行われ、この時点では3000円分のVプリカは支払いが行われた事もあって消失します。

 ですが絵師さん協力の下、2018年12月4日試しにキャンセル処理をしていただいたところ、3000円分のVプリカが返金されてきました。

 3000円分のVプリカを使い、残高を使い切った事もあってそのVプリカは消失していたものの、返金されると復活しています。ただ、一度使い切った事もあって決済番号は新規のものとなりました。

 これはあくまで2018年12月3日~12月4日に私が試しただけのもので、今後、Vプリカ側の規約改定などによって変化するかもしれない点はお気をつけください。

 Vプリカは普通のプリペイドカードと違って今回のように返金できるシステムになっている事もあり、多分、そうはならないと思いますが一応ご用心を。

 

【まずはお試しでVプリカを使うのも手】

 未成年は購入できないもののVプリカはコンビニ等で気軽に購入できるため、Skeb対応のクレジットカードが無いけどお試しで使いたい時に便利です。

 ただ、Vプリカは通常のプリペイドと違い、コンビニ等で購入時に手数料が数百円ほど上乗せとなっています。そういう仕様なので何度もSkebを利用するとなると対応するクレジットカードを手に入れた方が良いと思います。

 

 

Skebで小説の挿絵を依頼してみたレポート~02:挿絵内容相談の詳細について

 

レポート目次

01:はじめに&依頼の大筋
02:挿絵内容相談の詳細について
03:支払い方法としてプリペイドカードを使う事について
04:結局のところの使用感は?
オマケ:見積もり前の打ち合わせログ

 

【見積もりを行うにあたっての相談】

 今回依頼した絵は小説用の挿絵として使う風景画でした。

 そのため小説の内容との齟齬が生まれないよう詳細についての打ち合わせが必要であり、その打ち合わせにはツイッターのダイレクトメールを使いました。

 文章や写真などを交えながら詳細を詰め、そのうえで見積もりを出していただいた形です。Skeb本来の使い方としては違うと思いますが、決済用として便利でした。

 

【見積もり&イラスト用に指定した事項】

■打ち合わせの大雑把な内容

 絵師さんにも必要事項を教えていただきながら指定しました。

①何の絵か?

 小説に出てくる「3階建アパート」の「全景」で依頼しました。

②アパートのデザインは?

 写真とざっくりとした平面図、その他文章で依頼しました。

③構図とアングル

 詳しくないのでおまかせしました。

④風景の時間帯

 小説の内容と整合性を取るために指定しました。

⑤その他・人物などの小物

 描くものが増えると手間も増えるので、基本アパートだけでおまかせしました。

⑥絵の描き込み具合

 今回依頼した絵師のsachiさんの過去作品を例に「これぐらいの内容でお願いします」と依頼しました。

⑦納品までのスケジュール

 最終的に「リクエスト受諾より1ヶ月以内」という事になりました。

⑧小説の挿絵として使いたい旨

 Skeb規約外の要望なので別途お願いし、了承いただきました。必要に応じて用途に関する取り決めをする必要があります。商用利用するか否か等。

 

【見積もり必要事項指定後のすり合わせ】

 上記の指定事項と、詳細指定を行った事も踏まえて見積もりをお願いしました。

 その見積もりを聞いたうえでSkeb経由で正式に依頼しました。

 今回は風景画なので風景に関する指定の話になっています。指定が細かく、描くものが多くなれば当然、依頼料は高くなります。

 

 

Skebで小説の挿絵を依頼してみたレポート~01:はじめに&依頼の大筋


【はじめに:Skebとは?】 

 Skebとは2018年11月30日より始まったイラスト有償依頼サービスです。

 ネット版有料スケブ(※1)のようなサービスで、支払いは依頼時に運営に預ける形で、報酬未払いを回避するものになっています。匿名で利用出来ます。

 

【小説の挿絵を依頼したレポート】

 これはSkebを決済用ツールとして利用し、小説の挿絵を依頼したレポートです。

 まず実際行った依頼の大筋を紹介し、気をつけた点などの紹介を行います。

 ガチャを引くより高い確率でレアなイラストが見れて、なおかつ好きな絵師さんへの応援に繋がるのでガチャ感覚で流行ってほしいと思って書きました。

 

【注意点1:リテイクなし】

 Skebは匿名でお手軽に利用可能ですが、描いていただいた絵のリテイクは無しとなっています。リテイク込みでの依頼がしたい時は他のサイトや個人間で連絡をとりましょう。

 

【注意点2:挿絵利用としては別途相談必要】

 今回は小説の挿絵として絵を依頼しましたが、挿絵は規約外のものになります。

 Skebの規約では「作品の権利はクリエイター(絵師)に帰属する」となっており、クリエイター側はクライアントに許可を求めることなく同人誌などで自由に再録が可能ともなっています。

 対してクライアントは鑑賞目的の他、SNSアイコンなどの一部の用途に限り二次利用可能であって挿絵に関しては規約外の用途となります。

 そのため、依頼の際は「どこのどの小説で挿絵として使いたい」といった旨を依頼に含め、それについて絵師さん側の了解を得る必要があります。

 

【依頼から受領までの大筋】

ツイッターで見積もり依頼
 どういう挿絵が欲しいかを相談し、ひとまず見積もりをお願いしました。

②挿絵内容相談

 見積もりを出すため、挿絵の詳細な内容をツイッターのダイレクトメールにて相談しました。詳細に関しては後述します。

③Skebで依頼(発注)

 Skebで正式に依頼を行いました。支払いはコンビニ等で買えるVisaプリペイドカード「Vプリカ」を使いましたが、注意点があるのでそちらも後述します。

④挿絵受領

 依頼していた挿絵を受領しました。支払いは③の時点で運営預かりとなり、依頼品受領したところで絵師さんに運営預かりのお金が移動する形となっています。

 

 

 大筋は上記の通りです。

 次項より大筋で書いた内容の詳細について説明していきます。

 

レポート目次

01:はじめに&依頼の大筋
02:挿絵内容相談の詳細について
03:支払い方法としてプリペイドカードを使う事について
04:結局のところの使用感は?
オマケ:見積もり前の打ち合わせログ

 

 ちなみに今回の依頼で納品していただいた挿絵は以下のもので、ミッドナイトノベルズで連載中の小説にて早速挿絵として利用させていただいております。

 挿絵だけではなく、今回のレポート作成も含めてご協力いただけましたsachi様ツイッターID:@sachi_chiko )、ありがとうございました。

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今回依頼した挿絵

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以前いただいたファンアート

 

■用語説明

※1:有料スケブ
 有料のイラストリクエストのこと。海外ではコミッションやコンホンという名称で呼ばれていて、個人のための特注品として見られていたり。

 

 

【ゴブリンスレイヤー】寒村から始めるゴブリン対策の考察

 ゴブリンスレイヤー、アニメ化おめでとうございます。

 小説8巻の感想を読書メーターに書いた時、「はぁ~、ゴブスレさんとこの王様って無能なのでは?(意訳)」とかのたまった上で「具体的なゴブリン対策の考えてみよう」と宣言したのでそれに関する記事です。

 ただ、緑の月Green Moonが浮かぶゴブスレ世界においては何をしようがGMの手のひらの上なので、大局的な事は何をしても無駄かもしれません。

 そのため私も本気で「うわっ! この王様、ゴブリンに対する意識がそこらの冒険者と同じで舐め腐ってる」「そこらの冒険者でも王様が務まるのでは??」などと思っているわけではありません。ホントです。

 大体、世界観的にしょうがない事なのはわかるのですが、そのうえでゴブスレさんのやっている「とりあえず目の前のゴブリンを殺す」という事ではなく、女神官ちゃんが8巻最後にチラリと考えていた「大きな視野でやるべき事」に関して考察して行こうと思います。

 まずは「ゴブリンの性能」について触れて行こうと思います。

 

「ゴブリンは雑魚」 ホントに雑魚なのか?

 ゴブリンはゴブリンスレイヤーに出てくる敵役の中で「雑魚」とされています。

 が、毎回のように単なる雑魚が出てくるだけだと物語としてメリハリが無い事もあってなのか、毎回のようにその強さについての描写が追加されていっています。

 作中に出てくる一般的な冒険者達は「ゴブリンは雑魚」と言っていますが、ゴブリンスレイヤーだけあってゴブリンがピックアップされ、読者はゴブリンに痛い目を見せられる者達を見ているだけに巻が進めば進むほど「一般的な冒険者」と「読者」のゴブリンに対する認識の差異が激しくなっているように思います。

 具体的に作中で描写されたゴブリンの性能と強みは下記のようなものです。

  • 人間の子供程度の力と知能なので単騎では弱い
  • 弱いからこそ討伐報奨金が低く、強い冒険者が討伐に行きづらい
  • 時折、力に優れた大型の個体も生まれる
  • 時折、術が使える個体もいる
  • 人型で武器を取り扱う事ができる
  • 力が弱いとはいえ投石や弓矢の飛び道具も扱える
  • 知能は低いとはいえ見張りや斥候を行うぐらいの頭はある
  • 知能は低いが毒を作ったり船を使う事はできる
  • 意思疎通するための言語がある
  • 狼を手懐け騎乗し、騎兵となる事もできる
  • 夜行性で暗視能力を持つ
  • 残忍で殺害を躊躇わない
  • 同種への仲間意識は薄く逃げる時は見捨てて逃げる
  • 同種同士で繁殖出来ないが人より優れた繁殖能力を持つ

 これが雑魚。ある意味、国家公認の雑魚でもある。

 人型で女性捕まえればサクサク増えて低いとはいえ知能がある時点で随分強い気がしますが、他と比較すると雑魚です。ゴブスレ世界、修羅の国すぎる……。

 幸い、そこそこに腕の立つ村人でも追い払う事は可能のようですし、ゴブスレさんが戦ってるようなどう見ても強いゴブリン集団は特例中の特例なのでしょう。

 

「税は払え。ゴブリンは冒険者が対処しろ」 村人はキレていいと思う

 ゴブスレ世界においてゴブリンは雑魚であり、冒険者が対応するのが常識。

 軍隊はいるものの、それらはゴブリンよりもっと危険な存在に対処する事になっています。いわばゴブリンは国家公認の雑魚です。

 この辺は仕方ない事だと思います。

 優秀な兵も国庫も限界がありますし、混沌の勢力が元気いっぱいであるらしい以上、王様と軍隊がゴブリンより他に対処せざるを得ないのは仕方がない事です。

 軍の手が足りない以上、必要に応じて雇える一種の傭兵である冒険者を統括するため冒険者ギルドを作り、さらに冒険者の質を上げるために訓練所も一応開設しているのは素晴らしい事だと思います。王様仕事してますね!

 ただ、わからないのが「ゴブリン対策の負担金」についてです。

 冒険者達はギルドで受注した依頼をこなし、それにより報酬を得ます。

 作中だとこの報酬は村が用意しているのですが、それはそれとして王様は税を取り立てています。個人的にはここがよくわからないのです。

 何でゴブリンに脅かされる村が金銭を二重に支払わされてるんですか。

 税金は取り立てるけど軍隊は派遣しないし、冒険者には自分達で報酬支払えって村人視点から考えると文句を言いたくなるような事をしていませんか? 仕事してください王様。

 もちろん、これは止むに止まれぬ事情がある筈なのです。

 例えば――

  • 村にも報酬支払わせるけどギルド(国)からも報酬上乗せするよ
  • 税金は街道の整備や他の危機への対処に使うから仕方ないんだよ
  • ホント余裕ないんだよ中世並みなんだよ
  • 税だけで満額負担出来ると思うなよ
  • 報酬支払うような村は税金ちゃんと収めてないだけ
  • 全部神様が悪い

 おそらくこういう理由があるのでしょう。

 実際、ゴブスレ1巻の後半ではギルドが報奨金用意してますし、「税金取るだけ取って仕事してねえな国家ァ!」って事は無いのです。税金だけで何とかなるようなら現代国家は借金などしないでしょうし、仕方ないのです。

 それはそれとして今までゴブリン被害の描写とか見てると王様に「いや、獰猛な笑みとか浮かべて竜でも狩りに行っちゃおうかな~、ゴブリンとか雑魚いし~とか思ってドヤってる場合じゃないんじゃないんですか」と言いたくなるんです。王様きらい、こいつちょっと意識変わるぐらい痛い目見ればいいのに……と思うぐらいに。

  民草はまた生えてきますが、ゴブスレさんのお姉さんは生えてこないんですよ

 色んな事情から対処しきれないのは理解できるので……もうちょっとこう、「ゴブリンは弱いが厄介だ」ぐらいの意識には変わってください王様、と言いたい。

 

やっぱり冒険者任せはあんまりなのでは?

 税を取り立てる以上、殆どの事を冒険者任せにするのはどうかと思うのです。

 そういう思考は現代の余裕ありきのものであり、世界観的にそういう考えは「世情を汲み取れていない」というものなのかもしれません。いえ、そうなのでしょう。

 ただ、作中で受付嬢さん達に「何とかしてくれー!」と必死に頼んでいた村人さん達の視点に立つと、何とかしてあげてほしいと思わずにはいられないのです。

 無い袖は振れないと思うので具体案の話にいきましょう。

 ただ、これから挙げる具体案は「机上の空論」であり、実現困難なものが多いと思います。それに神が実質的に支配する世界観的に、何をやっても無駄でゴブスレさんのように黙々とゴブリン退治してるのが最適解――とかなのかもしれません。

 それでも女神官ちゃんがチラチラ考えている「大きな視野でやること」について考えていきます。

 

【教導隊発足】金が無いなら自衛力を高める指導を行う

 ゴブスレ世界において国がゴブリンに対応出来ていないのは、他に対応すべき敵がいるためで、余裕さえあれば軍隊がゴブリンに対処する事もあり得るでしょう。

 ただ、軍隊内でその余裕を作り出すのがそもそも難しい。

 なら、村個別の対応能力を上げる方向で努力するのも一つの手だと思います。

 幸いと言うべきかゴブリンは一応雑魚であり、腕の立つ村人なら一匹二匹程度なら追い払う事は可能のようです。その自衛能力をさらに高めていきましょう。

 最初に行うべきは知識の共有です。

 ゴブスレさんはゴブリンに奪われてはいけないとメモを取る事を拒んだりはするものの、対処方法の体系化は大事です。ゴブスレさんが教え導くからこそ女神官ちゃん自身が自分の頭で考え、対応出来ていたりするように。

 知識を伝えるべき相手は村人達。

 知識を伝えるのは国軍が良いと思います。

 前提として「軍隊内にゴブリンに対応する余力がない」としていますが、とはいえ国が直接的に村を助けるための働きをしていなければ税を払う有り難みも失せると思います。有り難みを抱けるかどうかはともかく。

 各村の対処能力の向上を図って冒険者ギルドに回している分の予算を冒険者ではなく、国が直接関わる教え導くための軍隊、教導隊に回すのです。回せるかどうかはともかく。

 教導隊の仕事は大別すると以下の通りです。

  1. 各村のゴブリン以外も含む危機対処能力向上のための指導
  2. 国が直接動いてますよ~冒険者に丸投げじゃないですよ~というアピール

 

教導隊が実際に指導すべき事

 ここで言う教導隊が主にやるべき事は指導です。

 では、どういう事を指導していくかと言うと以下の通り。

ゴブリンの危険性を実際の事件を挙げて説く

  ゴブリンは雑魚、と侮るのは冒険者に見受けられやすい事だけで村人はそうでもないのかもしれませんが、「ゴブリンがどんな存在か」「どんな戦い方をするか」「村で暮らすうえでどう気をつければいいか」は説いていくべきだと思います。

 とはいえ、あまり小難しい話をしていても危機感を抱いてもらいづらいかもしれません。

 吟遊詩人が語る物語風味にゴブリンやその他に危機に対しての教訓話を語るといいかもしれません。娯楽に飢えた寒村であれば他の村で起きた悲劇であっても酒の肴になるでしょう。

巡回の必要性と方法について説く

 作中のゴブリン達は襲撃を行う際、斥候を出したりしています。

 あるいは村の近隣をうろついていたりすると足跡を残したりしているので、早め早めに対処できるように村の近隣ぐらいはよく巡回するよう説くべきでしょう。既にやっていて運悪く見つけられず、攻め滅ぼされた村も多そうですが。

 また、ゴブリンの巣になりそうな場所はよくチェックして貰うべきです。

 洞窟や古城があれば特に見張るべきでしょう。例えば洞窟の入り口を遠くから見張れるよう、洞窟周りの木を切り倒しておいたり、可能であれば巣に利用されてしまいそうなものはさっさと潰すという事を行うべきです。

 あるいは、あえて巣になりそうな場所を放置しましょう。

 巣になりそうな洞窟、あるいは以前、巣にされていた洞窟を放置しておき、「洞窟内の地図を作る」「洞窟内に隠し通路を作っておく」「松明を設置しておける台だけをゴブリンの手の届かない場所に作っておく」という事をします。

 そうしていざ、ゴブリンがそこに巣を作ったら事前に行っておいた「攻め落としやすくする準備」を利用して冒険者の人達に利用して貰うなどするのです。

 放置する洞窟としては岩盤が硬いところがいいかもしれません。

 ゴブリン達も自分達の都合の良い形に横穴を掘る可能性があるので、そういう事をしづらい洞窟なら空気穴を作られて燻し殺すという手も取りやすくなるでしょう。

 日々見張っておき、情報を収集し、派遣されてきた冒険者の人達に引き渡すのは大事です。

 冒険者が依頼を達成する成功率を高めるという事は、村人達が生き残る可能性にも繋がります。

 洞窟が占有された日数を計測し、洞窟内が掘られて改築されているとしたらこれほどの規模が予想されるといった情報。洞窟にどの程度のゴブリンが出入りしているか。どの程度の食料が運び込まれているかなどから内部にいる数を予想する。木を運び入れて何か作ったりしている様子は無いか。特殊な個体はいないか。弓矢や槍を持っているかなどの武装の有無。ゴブリン達がどの程度痩せ細っているか、といった情報を収集しましょう。

 情報は力です。

 まあ、どんだけガッチガチに対策しようが神様次第でそこらの村などボコーッとやられたり、どれだけ説いても村人がちゃんとしてくれるとは限りませんけどね。世知辛い世界観……。

 洞窟も塞いでも塞いでも、ロックイーターあたりが「よろしくニキーwwww皆のために洞窟作っといたでぇ!wwwwww」とかやるのかもしれませんね。

 村人達が色々と詰んでる気がしてなりませんが、言い出したらキリがないので話を進めます。

村の防備を固めさせる

 ゴブリン達は村を襲います。つまり攻城戦における攻め手です。

 防備さえしっかり固めておけば弱兵でも撃退しやすくなるでしょう。

 外伝イヤーワンで出てきた寒村など「攻め滅ぼしてください」と言わんばかりの防備です。夜警する以外にも、もっと、こう、危機感を……危機感を抱いてください。

 村全体を堅牢な防壁で覆うのは寂れた村では不可能でしょう。それならせめて食料庫といざという時、村人が逃げ込めてなおかつ余程大規模な群れや特殊な個体相手でなければ籠城できるぐらいの避難所(例えば石造りの)は作っておくべきです。 

 余裕があれば村の全周、あるいは畑などだけでも堀や木柵で覆ったりしてもいいかもしれません。それで100%の安全は確保出来たりはしないと思いますが、ごく少数のゴブリンに作物や家畜を盗まれるという被害を減らし相手を飢えさせられるかもしれません。

 幸い、ゴブリンは一匹だけでは力は子供並み、背丈も基本的には子供並みです。子供が破れない程度の仕掛けでもそこそこには機能するのでしょう。知能あるのが厄介ですが……。

 作物が取られやすいルート、村を一望出来る偵察にもってこいの場所などに罠を仕掛けるのも効果的でしょう。寒村がトラバサミを大量に用意するのは無理にしても、子供が引っかかる程度の落とし穴は作れるはずです。

 また、殺傷力や拘束力のない単なる糸や鳴子を設置しておいて近場にゴブリンが来ていたことが後でわかりやすくしておくのも手だと思います。

 残念ながらゴブリンだけが引っかかりやすい罠となると身体的な特徴としては難しいところですが、背丈的には落とし穴は人間以上に効果的なはずです。特に一匹、二匹程度が備え無く穴に落ちて出れなくなればなぶり殺しにしやすくなるでしょう。

 ただ、注意しておかないと人間の子供が罠で死ぬかもしれません。

 そこで平時は凶悪な罠は控え、ゴブリンやその他の危険が目撃された時には凶悪なものも仕掛け、子供を集めて大人しくしておいてもらうべきでしょう。深掘りの落とし穴は普段は板を置いて蓋をしておくとか。

  大きな群れが来たら防備を固めたところで寒村では抗えないでしょう。

 それでも少数の渡りなどを飢えさせる備えはするべきです。

戦闘技術の指導

 各村の自衛力を高めるとなると戦闘のための技術を高めるのも大事でしょう。

 それこそイングランドのように武装条例を定め、日頃からの訓練もさせたり。有事に動員する時にも多少なりには戦力として使えるはずです。……村人の幸福を先に説いてたのに動員に関して考えるのもちぐはぐ感ありますが。

 ただ、ゴブリンスレイヤー世界でそういう事を出来るかどうかという問題はありますよね。魔法とか怪物がいる世界なので、木っ端の農民兵などいても邪魔かもしれません。

 それでもゴブリンを含む比較的低度の危機に対するなら戦闘訓練を積ませておくべきかと。

  武器はゴブリンに奪われても使われづらいもの――例えばゴブリンの力では振るいづらい重いものがいいのかもしれませんが、やっぱり飛び道具が有用だと思うんですよね奪われても。

 ゴブリンスレイヤーの世界は火星じゃないですし、使う道具を縛って負けたら元も子もないですよ。奪われた事で苦戦してたりもしてますけども。

金策の伝授

 寒村は「貧しい」「冒険者への報酬用意できない」「ゴブリン来た」「滅んだ」という負の連鎖を引き起こしているので、村人達の生活が豊かになるのも大事です。

 これは村だけの話ではなく、村々から税を得ている国を富ませるための方策でもあります。豊かな国になれば国庫にも余裕ができ、ゴブリンに限らず色んな事に手が回ります。

 では、伝えるべき金策は何か。

 それは、ノーフォーク農法です!

 というのは半分冗談ですが育てやすく大量に取れる農作物があればそういうのを伝えるのが良いでしょう。閉鎖的な寒村に外部から豊かになる方法を伝えるのは大事です。

 他、農閑期などに暇を見て作れる工芸品なども推奨し、農業に限らず産業振興していくべきです。それこそ上杉鷹山笹野彫を勧めたように副業を持たせるのも良いかと。

 むしろ、戦いの準備よりもこういう事の方が大事なのかもしれません。

 現実における獣害がもっと酷くなったような世界で無ければ……。

 

「弱い」という強み

 ゴブリンの厄介なところの一つとして、「弱い」「雑魚である」という事があります。

 これはゴブリンの性能について触れた時にもチラッと書いたのですが、「弱いからこそ軍隊や腕利き冒険者ではなく、弱い冒険者が対応に当たる」という事が発生しています。

 ゴブリンを殺しても儲からない。これがゴブリンが幅をきかせる一因になっています。

 つまり報酬さえしっかりしていれば雑魚Vs雑魚なんて事をしなくて済むわけです。

 じゃあ沢山報酬を出そう、というのは無理な話です。ただでさえ「金がねえ」とかやってる国家なので無い袖は振れません。

 農業革命や産業革命が起こせればいいのかもしれませんが、それはもう賢し過ぎて「そんなので解決するのはゴブリンスレイヤーらしくないのでは?」という疑問がちらつく事になるでしょう。

 今回十分、「それゴブリンスレイヤーのやる事か?」って事に考察してますけども。

ゴブリンの首で免税を行う

 下手したら酷い愚策になるのですが、ゴブリンの首で免税するという手があります。

 ゴブリンの首を狩る=免税という利益を提示し、村人達にゴブリン対策を積極的に進めてもらうための動機づけをするのです。 

 免税したら税収が減りますがそこは冒険者ギルドを運営するなどのゴブリン対策費との相談です。「免税した方が対策費をかけずに済む」ぐらいの免税にします。

 つまり、ゴブリンの首があれば全額免税~なんて事は当然しないのです。

 ただ、これは本当に危険な愚策になりかねないものです。

 村人達がこれにより積極的にゴブリン狩りを行うようになった場合、返り討ちにある者も出てくるでしょう。それではもう木っ端の冒険者が死んでるのと大差ないことです。

 農作業ほっぽりだしてゴブリン狩りに精を出させず、かといってゴブリン対策に消極的にならない程度の免税設定となると中々に難しいと思います。

 冒険者がゴブリンを狩り、その首を免税額より安く村人に売り、村人がその首で免税を行うという事もやりかねないですし……。

 

最終的にはゴブリン対策部隊を作るべきでは?

 税を取り立てる以上、それが必要な事に使われないと大衆は文句を言うでしょう。

 もちろん、ゴブスレ世界において税は軍を整えたり街道整備したり諸々の「民のための政策」に使われているのは確かなはずです。

 ただ、一方で村人にとってドラゴンなどよりは身近な危機であるゴブリンへの対策は「冒険者がんばれ~」「冒険者しんだ」「次の冒険者がんばれ~」ってギルドは介しつつも半分ぐらいは丸投げにしてるのが現状なのでは無いでしょうか。

 そのため、可能であれば軍が直接ゴブリンも叩くべきだと思います。

 軍が直接出張ってくる事で村人達に「こういう事に税を使ってるんだよ~」とアピールしやすくなります。それが出来ないから苦しいんだよ! というのはわかるのですが、「国軍」と「国が仲介した冒険者」じゃどっちが「国が動いてくれている感が強いですか」と言いたいです。

 本当に、それをする余裕が無いから「仕方ない」世界観ではあるんですけどね。

 やっぱ冒険者なんていう無頼の輩に任せてちゃ駄目だと思うんですよ!

 国軍でもない荒くれ者が町中で武器持ってブラブラしていて、その辺で酒を飲んでたりしてたら道行く罪のない一般人をズバァと斬り殺す事件も発生しかねないんですよ!

 冒険者制度は危険なんです、将来的には廃止すべきなんです!

 とか何とか言ってる奴が書いてる話(異世界職業図鑑少年冒険者の生活)は「冒険者に丸投げ~」「国軍? そんなものはほぼない」というろくでもない世界観なんですけどね。ひどいブーメランだ。

仮にそんな部隊が作れるならば――

 少数でも良いので精鋭を揃え、「ゴブリンの中でも特に厄介なゴブリンの群れ」にブツける形で運用すればいいんじゃないでしょうか。

 進んでゴブリン狩りに行く精鋭揃えるのがそもそも難しいんですが、ゴブリンスレイヤーさんという丁度良い人がいるんですよ……コミュ障だけど……。

 対ゴブリン戦闘に優れているだけではなく、吟遊詩人の歌にもなり、その存在を喜ぶ一般人がいる以上(原作1巻のように)、対ゴブリン部隊の旗頭として実力面も名声面もちょうど良いと思うんですよね。

 どこにでも駆けつけやすい中心地に詰め所を作り、連絡用の狼煙台とかも普及させ、中心地から馬で一気に派遣するとか出来たら便利だと思うんですよね。単にゴブリン退治するだけではなく色々と。

 問題はゴブスレさんが御しづらそうなとこでしょうか。

 特に厄介なゴブリンに向かってほしいものの、「ゴブリンは皆殺しだ」とその辺に出た一匹、二匹程度のゴブリンも走っていって本格的にヤバイ集団への対処が遅れかねないかもしれないとことか……。

 

 ゴブスレさんはホント、もっと大局的な事を見据えてほしいです。

 世界観的に仕方がなく、狂ってるところもあってそういう面でも仕方ないのはわかるんです。でも、「ゴブリンスレイヤー」ではなく「一人の有能な戦士」としては「勿体無い!」と思わずにはいられないのです。

 それこそ、もし私がゴブスレ世界の直ぐ死ぬイキり冒険者だったら「ゴブリンスレイヤーってゴブリン皆殺しとか言ってるのに小規模な活動ばっかりじゃん」「人が一人で出来る事なんて限られるのに……」「ひょっとして自分だけがヒーローになりたいのか?」「いや、ゴブリンに犯された村娘が突き刺さるような性癖なのかね」とか言ってやっかみそうです(※この後ゴブリンに殺される

 

「十三世紀のハローワーク」紹介と狩狼官から見る冒険者が働く動機

中世実在職業解説本 十三世紀のハローワーク

中世実在職業解説本 十三世紀のハローワーク

 

イラストいっぱい昔の職業図鑑

 今回紹介するのは「十三世紀のハローワーク(著:グレゴリウス山田先生)」です。

 内容はかつて存在した100以上の職業に関し、ふんだんにイラストを使って紹介してくださった本です。漫画感覚で読む事が出来ます。

 ヴァイキング、剣闘士といった戦うお仕事に限らず、石工・鵜飼・傘貸し屋・鯨骨職人・コーヒー嗅ぎ・鳥刺しなどなど日常を支える職業も多種紹介されています。

 ファンタジー世界の物語を作る時、日常に存在する職業として入れ込んでいく助けになります。2000円超えて来ますがイラスト図鑑的なものなので値段分の価値は十分あります。眺めてて楽しい。

 amazonの商品説明のところにどんな形で書かれているかの画像あるので、そちらも御覧ください。

 

中世のハンター:狩狼官

 資料用、鑑賞用ならず、妄想にも役立ちます。拙作、異世界職業図鑑も影響を受けています。特に影響を受けたのは「狩狼官」についての項目です。

 索引に書かれているお言葉をお借りすると狩狼官とは「狼狩りの専門家。狼に関する狩猟の権利を独占していたが、越権と無能のためにあまり役に立たなかった。」というものです。

 物語世界の冒険者みたいな存在だ、と考えるとムクムク妄想が広がり、異世界職業図鑑では冒険者の収益モデルとして影響を受けました。

 狼を魔物、モンスター、化け物に置き換える事が出来るよね、と。

 物語世界に出てくる冒険者、ハンター、狩人も職業です。化け物と命がけで戦う以上、戦う動機が必要です。伊達や酔狂だけでは生活出来ていない筈です。

 戦う動機に関しては以下のようなもの等が考えられます。

  1. バケモノの死体が売れる(直結収入型)
  2. 経済活動の邪魔ゆえに駆除必要(間接収入型)
  3. 強さを示す儀式(伊達や酔狂)

 3.はさておき、1と2は狩猟する事で収入が得られます。

 1は肉や毛皮の事です。ゲームであれば身も蓋もなくお金がドロップする事がありますね。

 他、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」であればモンスターを倒す事で魔石という物品が手に入り、それを売って収入を得る事が出来ます。

 2の経済活動は例えば「街道にバケモノ居座って交易の邪魔になっている」「鉱山近くにバケモノがいて鉱業が出来ない」という障害として登場するがゆえに討伐する必要性が生まれるものです。

 討伐の報酬を払うのは街道を商人なり国、組織です。

 報酬に使う財源は交易収入、鉱業収入から必要経費として供出する事になります。何でも感でもバンバン報酬支払ってくれる太っ腹な世界もありますが、多分、裏では経済活動――というか財源に結びついてる何かがあるんでしょう。

 十三世紀のハローワークにて紹介されている狩狼官は「間接収入型」の報酬を得る方法が示されています。

 もちろん狼の毛皮を売るなどの直結収入型の対価も両取りで得ていたと思われますが、ファンタジー作品によく出てくる報酬を得る方法とは少し違う間接収入型なのです。

 どういうものかと言うと、「狼を仕留めると、周囲8キロの各家庭から税を徴収する権利が与えられた」というものです。徴税権ですね。

 国の依頼で動く場合、国庫から報酬を貰うにしてもその国庫に入っているのはそもそも税金でしょうけれども、徴税権そのものが与えられている作品は私は見た事がありません(あったら教えてください……)

 これは狼を魔物に置き換えれば色んなものに転用出来るでしょう。

 やったよ冒険者ちゃん、タダ働きせずに済むよ。

 でも、クソみたいな制度ですよね。

 創作で扱う分には面白いんですが、実際に我が身に徴税報酬制度の影響が及ぶと「ふざけんなカス」と思うこと間違いなし。

 実際、13世紀のハローワークでもこれは悪しきシステムとして書かれています。あえて悪用し放題な制度を導入するのも創作の醍醐味だと思います。

 

作中の収入モデルとして徴税権は使っていいのか?

 税金払うの大好き!! という人は中々いらっしゃらないでしょう。

 そう思うのは現実に存在する人だけではなく、創作物の中に登場する人々――例えば名もなき農民や町民なども、臨時の徴税はあまり良い顔をしないはずです。

 もちろん、バケモノによる実害を受けていたり、生きるか死ぬかの状況に自分が置かれていたのであれば、少しは理解を示してくれる筈ですが……それでも徴税権は徴税権です。

 物語に出てくる主人公がこの制度を使うとなると登場人物の思考回路を捻じ曲げない限り、主人公のみならず冒険者なりハンター業界全体への不満が当たり前な世界になりかねません。

 13世紀のハローワークの狩狼官はクソだよね、というだけではなく良い事も書かれてます。

ちなみにイギリスでは狼狩りはもっと人々に開かれていた。そして彼の地では、税の代わりに狼の首を収めることを認める制度が普及していた。その結果どうだったか? イギリスでは狼は16世紀には早々に絶滅していた。

十三世紀のハローワーク 63ページ

 種の絶滅とか自然保護の観点で言えばヤバいんですが、生き死にかかってますしね。

 魔物ヤバイは絶滅させなきゃ……って世界の場合、徴税権より前向きな動機となり得る免税権で魔物狩る動機を作って友達に差をつけちゃいましょう。

 免税なら、まだ徴税より前向きに考えてもらえる筈です!

 

収入モデル:免税権

 例えばハンターが魔物を狩り、刈り取った首を農民に税金より安く売る。

 農民はそれを納めて免税してもらう。ド違法な臭いがする素敵制度の完成です。ダフ屋かな? いいんだよ農民は助かるから主人公は正義の味方となり、何なら重税を課してくる王政打倒に動いちゃおうねぇ……!

 しいて悪い点を挙げるとなると、物語全体のスケールがショボくなりそうな事でしょうか。人対バケモノがメインの物語でないならいい気はしますが……。

 領主主人公の場合、魔物駆除のために免税制度として普及させる側に回るのも良さそうですが、そこらの農民=魔物狩り素人が免税権に目が眩んで魔物と戦って死んだ、という展開に繋がりそうなので注意が必要な気がします。人なんてそこらに生やせるとはいえ。

 もういっそのこと魔物討伐のために駆除税を設けるのも手かもしれませんね。みかじめ料かな? ここまで来るともう、無頼な冒険者ではなく軍隊で何とかしようね、という話になってきそうです。

 そもそも、荒くれ者ではなく市民に認められる冒険者という職業を成立させるのは難しいですね。

 そもそも武器持って好き勝手に闊歩してる存在が王や領主を脅かしかねないものですし。

 ともかく職業関係の妄想が捗るオススメの一冊で、様々な職業があるので物語の脇を固める人物達が就く職業を決めるのにも役立ちます。

 世界観作りの取っ掛かりに是非。

 

 

オマケ:現実のハンター稼業

www.hokkaido-np.co.jp

 遠藤さんが狩猟免許を取得したのは20代だった2008年。地元でエゾシカが牧草地などを食い荒らす被害が深刻化し、これを食い止めたいと取得を決めた。休日に猟に出かけ、シカやヒグマなどを年間約100頭捕獲する。町に引き渡すと、有害鳥獣駆除の補助金としてシカやクマ1頭当たり1万円を受け取ることができ、「副業としても成り立っている」という。

 

 

動物の痕跡と創作への活用

 

アニマルトラック&バードトラックハンドブック

アニマルトラック&バードトラックハンドブック

 

 

主に動物の足跡について書いた本

 今回紹介するのは「アニマルトラック&バードトラックハンドブック(著:今泉忠明)」 小説とかではなく、動物の痕跡について解説した本です。書くうえでの資料に使ってます。

 あくまで現実に存在する動物の痕跡についての本ですが、解説されている内容はファンタジー作品などに出てくる化け物が残す痕跡にもすり合わせ、転用していけるものです。

 解説されている痕跡で主なものは足跡。足跡一つとっても獣ごとに形が違うだけではなく、その獣がどういう状況で足跡を残したかの推測材料になります。

 例を挙げると、同じキツネが残した足跡でも「歩行」「速歩」「走行」「疾走」で足跡のパターンが変わる事についても書かれています。

 人間でも歩行と疾走では靴跡の残り方が違うと言えば、馴染み深いでしょうか。ゆっくり歩いていればペタペタと靴全体がスタンプのように残りやすいですが、走るとなるとつま先で大地を蹴るように進んだ場合、かかと部分の跡は残りません。

 

創作への活用方法:バケモノも痕跡を残す

 この手の足跡について読み取る知識は狩猟で役立ちます。創作世界であればモンスター、魔物が残す痕跡について描写する時の足がかりとなり得ます。

 例えば「特定の魔物を追っているシチュエーション」で痕跡について書くとなると、こんな感じでしょうか。

作例:痕跡によるバケモノ追跡

主人公「僕達が追ってるステゴサウルスはこの谷沿いの道を走っていったようだね」

ヒロイン「何でわかるんですか!? しゅごい」

主「ステゴサウルスの足跡が残っているだろう? これを追っていけば……ほら、この広場で戦ったようだね」

主「ここ一帯だけステゴサウルスと人間の足跡がそこら中についている。これだけ踏み固められて、なおかつ血痕が残っているとなると戦闘があったと見て間違いない」

ヒ「さすごしゅ!」

主「そして、ステゴサウルスはここに横倒しで倒れ死んだようだね。既に死体を持っていかれたようだ。ごらん、荷車の轍が街に向かっている。やれやれ、横取りされてしまった」

ヒ「アレの死体を持って帰らないとウチの弟が死ぬのに……何か手はないんですか!?」

主「無いよ。横取りされたから仕方ないね」
ヒ「刺すごしゅ!」

 本に書かれているのは足跡だけではありません。「特徴的な習性」「食べ痕」「生活痕」「ヌタ場やラッセル痕」「動物の落とし物(糞)」についても簡単に紹介されています。

 ただ、足跡以外については大体軽く触れている程度です。ですが入門書としてこれを読み、さらに詳しい知識はこれ以外のアニマルトラックについての本を読んだり、実際に山に入る事などをオススメします。

 内容も絵が多く読みやすく、狩猟用やアニマルトラッキング用だけではなく、創作の資料や設定作りの材料になること請け合いです。

 

スライムも痕跡を残す?

 例えば動くスライムが現実にいたとすると、移動手段がナメクジ的な「這う」という手段を使ってる場合、地面に残る痕跡はズリズリと這いずった形になるんだろうなぁという妄想が捗ります。

 這いずる場合、進行方向に土が寄っていく形になるでしょうから匍匐跡から「スライムがどの方角に進んでいったか」の判断材料を得られる筈です。こういう痕跡は創作物内でスライム狩りをしようとしている冒険者なり狩人が追跡する手がかりとする描写に使えるでしょう。

 現実に動くスライムがいないにしても玩具のスライムを実際に土の上を転がし、痕跡を観察するとさらに詳細な創作資料が手に入るはずです。俺は怠慢なのでそこまでしてませんが。

 進行方向に関してはスライムに限らず、他の動物でも推測出来ます。犬であれば爪と肉球の配置でどの方角を見て立ち、歩いていたかがわかりますよね。

 創作世界であれば犬に限らず、それに似た足跡の生き物達にも同じような推理を当てはめていく事が出来ます。例えば狼型の魔物とか。

 人間の靴底も前後対称のものはあまりないので、人の追跡してる時にも判断材料になりますよね。

 足跡の横幅も推理の材料になります。右足と左足の足跡の間がどれだけ離れているかで「おおよその横幅」が推測出来る事があるためです。

 人もよほど大股で歩いていない限り、残る足跡は肩幅程度のものになりますよね。それと同じです。

 創作の世界に活用していくとなると、全幅5mの四足歩行ドラゴンがいたとしましょう。デカいトカゲです。左右の足間距離や足跡の大きさを書く事で足跡を見ただけでも「これを残した魔物は馬鹿でかい奴だぞ」と登場人物に言わせる根拠になります。

 尻尾があるなら、巨大な尾が引きずられ、大蛇が這った跡の如く地面に残ってる残っているかもしれません。軽く振った時に尻尾のある高さの草木が外側に向かって折れているかもしれません実際に化け物と対面せずとも「どんな化け物か」を判断する事が出来るでしょう。

 定番の冒険者ギルドなり、魔物研究機関でもあればその手の痕跡は収集しているかもしれません。討伐の役に立つのでしない手はないでしょう。魔物狩りを生業としてる個人でも把握してるかもしれません。

 

痕跡は背丈も示す

 痕跡により、横幅以外にも全高を判断する事も可能です。既知の動物、化け物であれば足跡のサイズを過去のデータと照らし合わせれば大体の大きさもわかるでしょう。

 他、木や枝から推測出来るかもしれません。例えば木枝が不自然に折られていたとしましょう。自然に折れていないなら「魔物の身体が当たって折れた」などの可能性を推測出来ます。

 地上から10mの地点にある枝が折れていた場合、それぐらいの全高を持つ化け物が闊歩していたとわかるかもしれません。枝に限らず、木に爪とぎの跡が残っていればこれも判断材料になるでしょう。

 他、木肌や大岩にこすれて抜けた化け物の抜け毛、こすれた血痕や泥の跡があるかもしれません。抜け毛に関しては毛質で種を判断する材料になるかもしれませんね。

 足跡は常に残るとは限りません。極端な話、硬い石畳には残りづらいものです。反面、柔らかい泥や雨後の地面、雪が降った後であれば足跡は残りやすくなるはずです。砂漠などは時間が経つと砂が動いて足跡が消えるかもしれませんね。

 どんな場所であっても足跡がどの程度消えかけているかで、足跡の主がどれぐらい前に通ったか、という判断も出来るかもしれません。前日に大雪が降っていたとしたら、一昨日の足跡ではないと消去法で判断出来たりもします。

 地面に転がった糞便も立派な痕跡です。まだ温かければ糞野郎は近くにいるでしょう。柔らかく便秘気味であれば体調が悪いです。ぶっ殺すチャンスですね。

 このように物語の世界に出てくる化け物もフィールドサインを残す可能性に満ち溢れています。化け物との戦いを扱う場合、戦闘以外に痕跡に関する話を込める機会に恵まれるでしょう。

 獣達の生活習慣と移動の動線を考え、獣道に関しても触れていくといいかもしれません。

 空飛ぶ化け物が残す痕跡も、抜け落ちた羽毛や竜鱗などで直接相対せずとも判断出来るかもしれませんね。立派な糞も落ちているかもしれません。

 今回触れた痕跡の例はほんの一例で、紹介したアニマルトラック&バードトラックハンドブック(長い)以外にも痕跡関係の本は色々とあります。

 お近くの図書館にもあるかもしれません。現実の狩猟関係の資料は創作の妄想がとても捗り、描写をより良いものに近づける助けになる事もあります。書き込んだところで小説全体が面白くなるわけではありませんが……。

 

作例:痕跡の対人利用

ヒロイン「大変ですよ! ウチの村に悪名高いパコハメ盗賊団が攻めてきそうです!」

主人公「そういう時はこれ! ステゴサウルスの脚の剥製!」

ヒ「そんな粗大ごみ、何に使うんです?」

主「これを村の周辺にスタンプの如く押しまくるんだ。向こうがステゴサウルスの大群がいるとビビって逃げてくれるに違いない」

ヒ「さすごしゅ!」

 

盗賊「か、頭ぁ! 大変です! あの村の周りはステゴサウルスの足跡でいっぱいです! これでは村娘ちゃん達のパイオツを揉めませんよ」

頭「見せてみろ。……ふむ、これは偽の足跡だな」

盗賊「どうしてそう言い切れるんです?」

 

頭「足跡が浅い。ステゴサウルスは横綱10人分に匹敵する体重を持っているからな。本物ならもっと深くまで足跡が残っている。だから遠慮なく攻め落として男は殺し、女はお前たちの好きにしろッ!」

盗賊「さっすが~、お頭は話がわかるッ!」